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03|建物 福祉施設に木造という選択。素材ではなく、使われ方から考える。

福祉施設の計画で、木造を検討する機会が増えています。

木の質感や温かさ。

大きな空間をつくったときの素材感。

地域の木材を使うことによる地域とのつながり。

木造には、さまざまな魅力があります。

ただ、私たちは「福祉施設だから木造が良い」と最初から決めることはありません。

大切なのは、その施設に木造が本当に合っているのかを考えることです。

木造にすることが目的ではない

用途や規模によって、必要となる性能は変わります。

耐火性能。

構造計画。

コスト。

工期。

設備計画。

そして、完成後の維持管理。

これらを一つずつ整理したうえで、木造が適しているのであれば木造を選ぶ。

場合によっては、鉄骨やRCの方が適していることもあります。

「木造にしたい」という希望があったとしても、その希望だけで構造を決めるのではなく、建物全体を見ながら判断する。

設計者としては、そこを大切にしたいと考えています。

木の良さは、素材だけではない

木造の魅力は、木を見せることだけではありません。

構造や空間のつくり方によって、建物のスケール感や雰囲気も変わります。

利用者が過ごす場所にどのような素材を使うのか。

触れる場所はどうするのか。

傷や汚れがついたときに、どのように維持するのか。

木を使うことそのものよりも、木をどこに、どのように使うのかが大切です。

すべてを木で仕上げる必要もありません。

必要な場所に、必要な素材を選ぶ。

それによって、落ち着きのある空間と、維持管理しやすい環境を両立できる場合があります。

福祉施設は「使い続ける」ことまで設計する

福祉施設は、完成して終わりではありません。

毎日、多くの人が利用します。

設備も使い続けます。

床や壁は少しずつ傷みます。

時には、利用する人やサービスの内容が変わることもあります。

だからこそ、設計段階から、

掃除しやすいか。

修理しやすいか。

設備を更新できるか。

将来的に間取りを変更できる余地があるか。

といったことまで考えておく必要があります。

完成した日の写真だけでは分からない部分ですが、建物にとってはとても大切なことです。

10年後の施設を想像する

新しい施設が完成したときは、すべてがきれいです。

けれど、本当に大切なのは、その先です。

10年経ったとき。

20年経ったとき。

その建物は、どんなふうに使われているでしょうか。

利用者の生活が変わっているかもしれません。

職員の働き方が変わっているかもしれません。

設備を更新する必要が出てくるかもしれません。

そのときにも、建物が無理なく対応できるか。

設計するときには、完成写真だけではなく、少し先の建物の姿まで想像しておきたいと思っています。

「この場所だから、この施設になった」

木造にするか。

どんな素材を使うか。

どこに窓をつくるか。

どんな外部空間をつくるか。

一つひとつの判断には、その施設ごとの理由があります。

敷地が変われば、答えも変わります。

利用する人が変われば、必要な環境も変わります。

だからこそ、最初から決まった「福祉施設のかたち」を当てはめるのではなく、その場所、その人、その運営に合った答えを探していく。

「この場所だから、この施設になった。」

それが、私たちが目指したい福祉施設の姿です。

建物をつくることだけではなく、そこで過ごす人たちの時間を支えること。

そして、何年経っても「この施設でよかった」と思ってもらえること。

それまでを含めて、福祉施設の設計だと考えています。